HOMELinux道場Linux道場入門編第1回 Linuxとは

Linux道場入門編

第1回Linuxとは

はじめに

Linuxには様々な要素があり、その内容は幅広くまた奥深いものです。
このようなテーマを勉強していく上において、目標を定めることは重要なことです。例えば資格取得を目標に定めて、受験範囲で勉強していくことも1つの方法であるといえます。LinuC Level1というのはLinucの入門レベルの試験ではありますが、扱っている範囲が広くある程度Linuxを知っている、使っていることが前提となっています。

このためLinuxをこれから勉強したいと思っている人にとっては、前提知識をある程度、どこかでカバーする必要があります。
ここでは何回かに分けてLinuxをこれから勉強したいと思っている方でLinuC Level1を受験しようと考えている方に向けてLinuxの基礎をみていきたいと思います。

Linuxとは

そもそもLinuxとは何なのでしょうか?まずはLinuxというものの定義を明確にしたいと思います。LinuxはOS(Operating System)といわれる基本ソフトウェアの一種です。他の代表的なOSとしては、Windows、Mac OSなどがあげられます。こういったOSの役割というものはハードウェアの制御や、プログラムのインターフェイスを提供するなどユーザがコンピュータを利用する上において、利用しやすくするためのいわば環境を提供するものです。
こういったOSの中にはいくつかの機能的な特徴や設計の思想があり、それらが各OSの使い勝手や利用用途などを決定付けるものになっています。

例えばLinuxの大きな特徴の1つにマルチタスク・マルチユーザをサポートしていることが挙げられます。マルチタスクはプログラムの処理単位であるタスクを同時に実行できることを意味します。これはあるアプリケーションを動作させながら別のアプリケーションを動作させることができる機能です。つまり複数のプログラムを同時に動作させることができるわけです。そしてマルチユーザは複数のユーザが同時にOSを操作できることを意味しています。これは OSに複数のユーザーを登録できるだけではなく、その複数のユーザが同時にOSを操作できることが注目すべき点です。複数のユーザが同時にLinuxを操作する際にはユーザはことなるターミナル(端末)からログインし、そこから起動されるシェルで操作を行うため他のユーザが同時に操作していることを意識することはありません。
このあたりの詳しいお話は次回以降でお話していきますが、要は最初から複数のユーザが、同時に色んなアプリケーションを動作させることを考えて作られたOSであるということです。

UNIX とLinux

Linuxを考える際にもう1つ重要な要素があります。それがUNIXというOSの存在です。
LinuxはPC-UNIX、UNIXクローンのOSとも呼ばれ、基本的なOSとしての考え方をUNIXというOSに似せて作られています。このためLinuxを知るためにはUNIXという存在が不可欠になります。

1960年代にAT&T社のベル研究所でUNIXは誕生します。このUNIX開発の前にMulticsというOSの開発を行っていたのですが、完成したMulticsは巨大で複雑であったためにパフォーマンスが大変悪く、その開発プロジェクトは失敗に終わってしまいます。この経験もとに新たに開発されることになるOSのプロジェクトがUNICS(Uniplexed Information and Computing System)です。
UNICSはシンプルで独立したモジュール群で構成することによりパフォーマンスのよいOSとすることを目指しており、これが後にUNIXという名前になります。UNIXのuniには"単"という意味があり、Multicsのmulti(複)に対する意味が込められていることがわかります。この考え方をもとにつくられたUNIXは柔軟性、安定性に優れパフォーマンスのよいOSとして完成しました。

その後UNIXは大学などを中心として広く世界に浸透していきました。UNIXは様々なハードウェア(H/W)に対しての移植を考慮してつくられていたため、様々な会社が様々なH/Wに移植を行い、それが現在のIBMのAIX、SunのSolaris、HPのHP-UXなどのいわゆるUNIX系の OSとして現在も続いています。

  • ※現在ではUNIXという言葉はUNIX系OSの総称として使われています。

このようにUNIXの歴史は長いのですが、現在に至るその過程には様々な問題があり、様々な系統に分離していくことになります。その中からMINIXというUNIXクローンOSが誕生し、その分かりやすさからMINIXは教育用のOSとして利用されるようになりました。
ただMINIXは教育用のOSであり実用的なOSではなく、さらにソースコードは開示されていましたが、オープンソースではなかっため実用的な使用ができないという制約がありました。
この問題を解決すべく、フィンランドの21歳の学生(当時) Linus B. Torvalds氏がこのMINIXをお手本に1991年に作成したのがLinuxです。このことからLinuxはUNIXの流れをくむOSということになります。このようなUNIXをモデルとして作成されたUNIXのようなOSをUNIXクローンと呼んだりします。LinuxはライセンスフリーのOSとして公開されるとインターネットのニュースグループを通して多くのユーザーを獲得しました。そしてそれは同時に多くの開発者達を獲得することをも意味していました。インターネットを通して世界中のハッカー達がLinuxの開発に携わったのです。こうした背景にはUNIXが人気のOSだったことに理由があります。
昔のUNIXマシンは高価であったため、誰もが自由に利用できるようなものでありませんでした。
しかしUNIXは非常に人気のあるOSで、このOSを手軽に利用できることを様々な人たちは望んでいました。こうした中にLinuxが登場します。 Linuxは安価なIntel x86系のPC上で動作し、ソースコードは公開され、改変、再配布も自由というUNIXを利用したい人たちにはこの上ないOSであったわけです。こうして LinuxはUNIXクローンのOSとして発展していき、現在にいたります。

今回はLinuxとは?ということを中心にLinuxの誕生した経緯を中心にお話しましたが、次回以降はより具体的にLinuxの要素についてお話していこうと思います。

末永 貴一

コラム執筆/末永 貴一
株式会社エイチアイ研究開発部 部長

ヒューマンインターフェイスの研究開発、コンテンツの開発を行う株式会社エイチアイで次世代技術の研究開発を行う業務を担当している。 オープン系のシステム開発事業、教育事業を経て、自社独自の組込み機器向け3DリアルタイムレンダリングエンジンであるミドルウェアのMascotCapsuleを中心とした開発に従事した。数年前にLinuxを知ってからはサーバ構築、開発、教育、執筆などさまざまな場面で関わるようになり、現在では組込み開発でもLinuxを利用することもある。

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